【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第42章 死の外科医
ローはベポに言われ通り食堂に来ていた。目の前には見事な朝食が湯気を立てて用意されている。以前とは比べ物にならないとローは思った。ハートの海賊団結成時はまともに料理が出来る者がローしか居なかった。ペンギン達はやる気はあるものの才能と言うかセンスが無かった。
「キャプテン、食べないの?」
中々手を付けないローを見てシャチが声を掛ける。ローはあぁと返事をしおにぎりに手を伸ばした。
「…うめぇ」
程よい塩加減と握り具合、具のチョイスと量が絶妙だ。
「だろ?ジャンバールに教えて貰った!味噌汁も自信作だ!」
嬉しそうに話すシャチにローは納得した。
(そうか。アイツが…)
数ヶ月前、シャボンディ諸島のヒューマンオークションでの一件から仲間になった元奴隷のジャンバール。かつては海賊団の船長をしていたとのことで戦闘や統率力に長けており何かと助かっている。だが、ローに助けられた事に恩義を感じ忠誠を誓ったジャンバールには上に立とうという考えはない。
そのジャンバールが料理の腕もあったとは驚きだ。人は見た目に寄らないもんだとローは改めて感じた。
ローが完食した事に満足したシャチはローにコーヒーを煎れ持ち場に向かった。ローが熱いコーヒーを啜りながら新聞を読んでいるとバタバタと音が近付いて来て、食堂の前で止まったと思うと同時にドアが勢いよく開かれた。
「キャプテン…!?大変大変!!早く来てっ!!」
飛び込んできたのは白熊のベポ。
「ベポ…船内は走るな。」
ローが窘めるとベポはそれどころじゃないと言いローの元へ駆け寄ってきた。
「大変!!…あの子が…っ」
「!?」
「早く来て!キャプテン!」
「おい…!?ちょっと落ち着け…ベポっ!!なっ…」
腕を引っ張るベポを落ち着かせようとローがソファから立ち上がるとベポはそのままローの腕を掴み半ば引き摺るように医務室へと走った。
──
医務室の扉が見えたその時──
いやぁぁぁぁっ!!
叫び声がしガシャン、パリーンと物が割れたような音と共にガタン、ドサっと言う音がした。
「えっ!?…何!?」
ベポは不安げな声を漏らしローの方を思わず見た。
「ちっ!」
ローは容易に想像出来る扉の向こうの状況に舌打ちをした。
「行くぞ」
バンッ
ローは扉を勢い良く開け医務室に足を踏み入れた。