【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第20章 水の都へ
日も暮れ、賑やかだった街に夜の色が差し始め数時間、ミスティはブルーノの酒場に居た。
『…遅い。』
昼間、ルッチに酒場で待てと言われたが、当の本人が来ない。これではミスティは今夜、宿を探さねばならない。
「…宿ならルッチのとこに泊まれば良い。」
『何でそうなるんですか!?ダメですよ、そんなの!!』
「何故だ?お前はルッチの女だ。何の問題もない。」
さも当然のように言うブルーノにミスティは抗議する。
『女じゃないです。女役!』
「まぁ、もう少し待て。もう来るだろ。」
ブルーノはスっとミスティにアルコールの入ったグラスを出すと表の看板を"CLOSED"にした。
──
「何だこれは?」
時計の針がてっぺんを過ぎる少し前、ルッチは酒場にやって来た。中に入ればカウンターに突っ伏し眠る部下の姿があった。
「待ちくたびれて寝ちまった。酒、弱かったのか?」
「知らん。」
ブルーノの問い掛けにルッチは素っ気なく答えた。
「にしても今日はえらく遅かったな。」
「…まぁな。」
船大工の仕事はそんなに遅くなることはない。それが社の方針だとブルーノは以前カクから聞いていた。それにルッチが時間に遅れる等有り得ない。
「ミスティ、渡すものがあったらしいがこれじゃあ無理だな。今日は連れて帰ってくれないか?」
「何処へ?」
「お前のところだよ。此処は酒場で寝床はないからな。ミスティは女だ。床で寝させる訳にもいかんだろ。」
「……。」
ルッチは立ち上がり、眠っているミスティを抱き上げた。一瞬フワッとミスティの良い香りがしたが、直ぐにアルコールの匂いで消えた。
「上司の手を煩わせるとは部下失格だな。」
「お前を煩わせる事が出来るのはミスティぐらいだろう。」
愚痴るルッチにブルーノは面白そうに言った。
「仕置が必要だな。」
「…あまり無理させるなよ。」
ルッチはフッと鼻で笑うと酒場を後にした。
「…ミスティの奴、可哀想に。あれは相当溜まってるな。」
ブルーノは久しぶりに見たルッチの笑みから推察し、ミスティに同情した。