第2章 二夜目.ファンには夢を、君には愛を
「あ、勿論高い物とかじゃないから。むしろ、金はほとんどかからないんだけどさ。でもこう…ちょっと、今さら言い出しづらいんだけど」
『待って、大和。実は私ね、プレゼント用意して…る』
「え、そうなの?だったら言ってくれりゃ良かったのに。何で隠そうとしたんだよ」
『私も大和と同じ。言い出しづらくて、渡すのにちょっと勇気がいったから。
でも、私があげたい物と大和が欲しい物、同じだったら嬉しいから…やっぱ渡す』
言ってからエリはベットの下に手を伸ばし、ごそごそと用意していたプレゼントを探る。
「そんな、男子高校生がエロ本の隠し場所に選ぶようなとこに」
『へぇ。大和少年はそうだったのだねぇ』
「舐めるなよ。こっちはプロだぜ」
『何の』
指先にコツっと触れた物を、そっと掴んだ。そして、今年二回目となるおめでとうを伝える。
『はい。お誕生日、おめでとうござい…ます』
「二回も恋人に祝ってもらえるなんて、最高の誕生日だなあ」
そして大和は、手のひらに載せられた小箱のリボンを引く。中からは、アクセサリーケースのような開閉式の飾り箱が姿を現した。
ゆっくりと上蓋を持ち上げると、そこには…この部屋の合鍵が収まっていた。
大和は目を大きくして、人差し指と親指で摘んだそれを至近距離から見つめている。
『大和は一年前、それ、必要ないって言ったけど、やっぱり無いと不便じゃない?外で私を待ってたせいで、風邪とか引いたら大和ファンに申し訳が立たないし?
それにまぁ、やっぱり私が、どうしても持ってて欲しいって思っ』
エリの言葉尻を切るように、大和はその身体をぎゅっと抱き締めた。少し息苦しいほどに抱きすくめられ、耳辺りに頬が擦り寄せられる。
「ほんと、去年と言い今年と言い…こんな幸せな誕生日ないって。
ありがとう、エリ。これ、大事に使わせてもらうから」
その大和の笑顔を見れば、彼が欲しかった物は何だったのか。答えは明白である。