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十六夜の月【アイナナ短編集】

第6章 六夜目.その御伽噺の続きを私達はまだ知らない




【何故ここに】

【…御察しの通り、ソト殿下のご指示で赴きました】

【っ、エリを…どうするつもりですか】

【ナギ様には心苦しく思いますが…。ノースメイアへ、お連れします】

【……】

【お言葉ですがナギ様も、いつかこの日が来ることを覚悟されていたのでは?】

【いくらなんでも、早過ぎる。どうか、見逃してはくれませ】

【致しかねます】

【貴方は鬼です、それか悪魔か】


何を話しているか、この距離では全てを聞き取れない。それでなくともエリの中で、ノースメイア語はもう朧げなのだ。しかもナギは、彼女に聞き取られないようあえて早口で話をしているようだった。


【分かりました…。でしたら、エリは私がノースメイアへ連れて行く。他の誰でもない私の手で、終わらせます】

【ナギ様が、それでよろしいのでしたら…】

【是非も…ありません。感謝します】

【いえ…。では、その旨は私の方から殿下にお伝えしておきますので】




ナギが、こちらへと戻って来る。その表情は暗く、足取りも弱々しい。まるで鬼か悪魔と、盟約でも交わしたような。
彼がソルヴァルドと呼んだ男は、気が付くとその場から姿を消していた。

エリは、肩を落とすナギにどんな言葉をかけるべきなのか考えた。明確な答えを見出せずにいると、ふわりと手を掬い上げられる。ナギは何故か、縋るような瞳をしいた。


「エリ」

『うん、どうしたの?』

「ワタシと共に、ノースメイアへ参りましょう」

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