第2章 二夜目.ファンには夢を、君には愛を
—11小節目—
ありのままの気持ち
「起きてる?」
大和の声で、エリの意識はよりはっきりする。寝ていたわけではないが、どうやらうつらうつらと船を漕いでいたようだった。激しい運動の後に、心地よい人肌の中にいれば無理もない。
何か言葉を返す前に、大和はエリを抱く両腕に少しだけ力を込めて続ける。
「好きとか愛してるとかさ、ずっと封印しててごめんな。俺、怖かったんだよ。お前さんにどんどんのめり込んでってる自分が。だからこれ以上好きになっちゃ駄目だって、気持ちにセーブかける為にわざと言わなかったんだわ。
でもこれからは、今までの分も取り返すぐらい言ってくから。エリを不安にさせないように、ちゃんと伝えるから。なぁ。許してもらえる?」
エリは、喉の奥が熱くなった。今声を出せば、泣いてしまうだろう。大和の腕の中で、必死に涙を奥へと押し込める。
しかし、何も言わないエリに彼は不安になってしまったらしい。
「や、やっぱ怒ってる?ごめんね。いやマジで。すぐには許してくれなくていいから、とりあえずエリちゃんが今なに考えてるのか知りたいなー…なんて」
『……私が、大和の告白をオッケーした時は…まだ大和がアイドルだって知らなかった』
「昨日俺が言っちゃったことスゲェ根に持ってんのね!ごめんて…。頭に血上ったら、すぐキツイこと言っちゃうとこも直します」
大和がアイドルだから付き合っているなんて、大和だけには絶対思われたくなかった。
エリは、IDOLiSH7の二階堂大和が好きなのではない。たとえ彼が新聞屋さんでも、花屋さんでも、大和を好きになった自信があるのだ。