第2章 二夜目.ファンには夢を、君には愛を
ベットを背もたれにして床へ腰掛けた大和の、膝の上に座らされる。彼が眼鏡を外すと、決して優しいとは言えない目付きが露わになった。優しくはないのだが、彼女は彼のこの目が好きだった。
至近距離で見つめられキスをされると、心臓をきゅっと鷲掴みされたような心地になる。その度に、自分は彼を愛しているのだと実感させられた。
『ん…。大 和、』
「うん?」
『好き』
「…はい。俺も、好きだよ」
エリは服の裾から手を入れて、大和の胸に手のひらを当てる。
「ちょっ。やだ、何それ」
相変わらず、女が嫉妬するほどにきめ細やかな肌である。いや、そんなことを確かめたかったのではない。エリは、大和の心臓が刻む鼓動音を確かめる。
やはり、思った通りの速度でそれは鳴っていた。下手をすると自分よりも早い鼓動に、エリは嬉しそうに笑う。
『ふふ。好きって言う度にこれじゃ、心臓が持たないんじゃない?』
「いや…!俺も思ったけど、もうずっと言ってなかったからいざ口にしてみたら恥ずかしくて」
無理しなくても大和のペースでいい。そう伝えようとしたが、先に彼の方が口を開く。
「でも、言うよ。沢山。だって俺は、今日それを伝える為にエリに会いに来たんだから」
照れを隠すように笑った大和は、エリの背中に両腕を回した。それから、唇や瞼、頬に優しく口付けていく。そして、耳にキスを落とすと同時に、甘い声で囁く。
「愛してる」
大和の低いその声は、耳から脳へと伝わりやがて全身に広がった。
今、きっと彼女の心臓は、大和と同程度に早い鼓動を刻んでいるに違いない。