第2章 二夜目.ファンには夢を、君には愛を
「え、もしかしてこれ…私も参加した方がいいんですか」
「僕も、今日こちらへ出向いてくださった方々や、いつも応援してくださっている皆さんが大好きです!」
「逢坂さん。あなた、しれっと1番恥ずかしくないタイミングで言ってのけましたね」
「ご、ごめんね!トリだけは避けておいた方が良いかなと思って」
「まぁ確かに、私も大トリだけはごめんです。というわけで…皆さん。いつも私達のことを愛してくれてありがとうございます。私も、あなた達が好きですよ」
再び巻き起こる黄色い声援旋風を浴びながら、大和の肝は冷え続けている。分かりやすく自分の出番が来る流れだからだ。
「おー。んじゃラストは、やまさんだ」
「や、やっぱり?」
「大和さん、今日お誕生日ですもんね!格好良く決めちゃってください!」
無垢な笑顔で陸が言うと、客席からもおめでとうという言葉が飛んでくる。大和は、どうもどうもと頭を下げながら考えた。
こういう場で口にする “愛してる” の意味を、大和は理解していた。実際、普段なら深く考えずに使用していた。しかし…
「うーん。まぁ言ってもいいけどさ、でもやっぱそういう大事なことは…後で二人の時に、な」
『!!』
どうしてもその愛の言葉は、ただ一人だけに届けたかった。
「OH!やはり今夜のヤマトは一味違いますね!」
「なんか大人ー…。ヤマさんエロかった」
言われたい放題の大和だったが、なんとか観客からの反応も上々でこの場を凌ぐことが出来た。
それから無事にアンコールも終え、ステージの袖へと全員で帰る。胸を撫で下ろす大和の元へ、三月がやって来た。ニヤニヤ意味深な笑顔を浮かべながら、おっさん上手くやったなと小声で言った。
全ての事情を知る三月に揶揄われ、堪らなく恥ずかしくなる。うっせぇなと返すのが精一杯であった。
急いで帰り支度をする大和が、これから一体どこに行くのか。知っているのは、三月と壮五とナギのみ。言葉にはしなかったが、三人は我らがリーダーの幸せを心から願う。