第2章 二夜目.ファンには夢を、君には愛を
「まぁ、気付かなくても無理ないんじゃないかな。多分、大和さんには気付かれないようにしてたんだと思う。ずっと笑ってたろ?暗い話題なんか出さなかったろ?ちょっとしか話してないけど分かるよ。中崎ちゃん、そういう子だよなあ」
「そういう子…なんです」
大和は両手で顔を押さえ、さめざめと嘆く。大和の話をする際にエリの表情が時折陰るのを見て、三月から何か悩んでるんじゃないかと切り出したらしいが…。それにしても、それにしてもだ。何かに悩んでいるのなら、どうして自分に打ち明けてくれなかったのだろうと嘆いているのだ。
しかし、大和は思い直す。
「………」
(あぁ、違うな。こうなったのは、俺のせいだ。誰が、打ち明け話をしてこない相手に対して、自分の打ち明け話をするんだよ。秘密抱えてたのは、お互い様だったってことか)
もう一年近く一緒に居たのに、分かり合えたと思っていたのは実は表面上だけだった。その事実に気付いた大和は、嘲笑を零す。
「オレが口出すのも差し出がましいような気もすんだけどさ。聞く?中崎ちゃんが何に対して悩んでんのか」
「あぁ聞く聞く。早く全部話して」
「清々しいぐらい居直ってんな!!」
だって。どうせ考えたって、他人が胸に何を抱えているかなんて分からない。だったら一分でも早く正解に辿り着いて、一秒でも早くエリを楽にしてやりたい。
プライドも恥も外聞も容易く捨てられるくらいには、エリのことを大和は愛しているのだ。