第2章 二夜目.ファンには夢を、君には愛を
「話してみたら、すっげぇ良い子な!仮にハニトラだったりしたら、速攻で別れてもらうつもりだったんだけどさあ!」
「さらっと怖いこと言ってる…」
しかしこれで合点が言った。三月がどうして大和には内密に、エリと会う必要があったのか。
もしもエリが悪い女だった場合は、三月や壮五やナギが破局へ導く算段だったのだろう。実はエリは悪女でしたと、大和には気付かせぬようにこっそりと。自然な流れに見えるよう、工作して。そういう面倒なことを全力でやってのけるのだ。何故なら彼らは、心が本当に優しいから。
「はじめは、彼氏がいるから二人で会うのはちょっとって断られたんだよ。でも、大和さんのことで話があるって言って無理に付き合ってもらったわけ」
「どっちが悪なんだか。っつかなんだ、そういうことかよ…。何も知らないで俺、あいつにすげぇ酷い言葉吐いちまったんだけど」
「うっわマジで?おっさん最低」
「結構お前らのせいでもあるの分かってる?」
深い深い溜息を吐いた大和に、三月は申し訳なさそうに小さく手を上げた。
「あの、さ。落ち込んでるとこ悪いんだけど、さらに落ち込むことになるような事実言っていい?」
「え、やだぁ……」
「今日、彼女と話して分かったんだけど」
「嫌だって言ってんのに話すのかよ」
「中崎ちゃんが大和さんのことで、めちゃくちゃ悩んでんの気付いてた?」
大和が何も答えず目をまん丸にするのを見て、三月は呆れて言った。やっぱ気付いてないよなぁ、と。