第2章 二夜目.ファンには夢を、君には愛を
さすがに最後までは致さなかったが、キスだけで終わらせることも出来なかった。そこそこに体温を分かち合った二人は、背中を合わせて互いの衣服を整える。
気まずい空気が流れるかと思いきや、大和の声はとんでもなく明るい。
「んじゃそういうことで、今日からよろしくな!エリ」
『え?何をよろしくするんですか?』
「何をって。彼氏に向かってその冷たい言い草はないでしょ」
『は!?』
彼氏という単語にエリは驚き、勢いよく大和の方を確認する。
「まだこっち見ちゃいやん。エリのエッチ」
『欲しいって…、私の体が欲しかったんじゃないんですか』
「俺そんなこと言ってないけど。やっぱ出来ることなら、両方欲しいよな」
『両方、ですか』
「そ。体も、心も。だめ?」
可愛子ぶってみたら、それがどうやら功を奏したらしい。エリは、そんな顔をされたら駄目とは言い難いと、笑って言った。
『順番はチグハグですけど、でもまぁべつに細かいことはいいや。これからよろしく。
えっと…。ごめん、名前、何だっけ?』
「え……?えぇ!?あんた、俺のこと知らなかったのか!」
『う、うん。ごめん、名前もう聞いたっけ?』
「いや、言ってないけどもさ。はぁ…、お仕事もっと頑張らないとなあ」
よくよく考えれば、ようやくテレビに出られるようになった段階だ。それも、月に一回か二回程度。当然、知名度なんて高いはずもない。いくらエリがADでも、違う畑に居ればアイドルに疎くても不思議はない。
「じゃあ改めまして、自己紹介しまーす。
最近デビューしたばかりの、今を輝くピチピチなアイドル!IDOLiSH7のリーダー、二階堂大和です☆」
大和は、小さく舌を出してアイドルウィンクを決めた!
『……アイドル怖ぇえー…』
まさかさっきまで自分に触れていた男がアイドルだったと知ったエリは、あんぐりと口を開けて呟いた。