第2章 二夜目.ファンには夢を、君には愛を
良い流れだった。この流れに乗って、大和は言葉を紡ぐ。
この手の話をするは、彼にとってハードルが高かった。たがら、勢いに任せた。
「欲しいもんが、あるんだよね」
『えぇ。もうこれしか用意してないですよ』
「いや、これも嬉しいけどさ。酒も好きだし。でも俺が、本当に欲しいのは…お前さん」
聞き間違えたとでも思ったのだろうか。エリは何も答えず、代わりに数回大きく瞬きをした。
『……それは、どういう意味の “欲しい” ですか?』
「分からない?」
『はい。ごめんなさい』
「いいよ。じゃ、分かりやすくゆっくり行動に移してみるから、嫌だったら殴るか蹴るかしてくれ」
大和は言うと、本当にゆっくりとした動作でエリに近付いた。それから、さらにゆっくり腕を持ち上げ彼女の輪郭を指でなぞる。
エリはぴくりとだけ身体を動かしたが、殴ったり蹴ったりはしなかった。それを確認した大和は、指をそのまま顎先へ滑らせ少しだけ顔を上向ける。
あと、ほんの数センチで唇同士が触れる。そこで初めて、エリは抵抗を見せた。しかし、それは拒否ではない。
『か、鍵を…閉めて、もらえますか』
「……はは」
大和は意地悪そうに口角を上げてから、エリの耳元で囁く。
「とっくに閉めてる」
言い終わってからすぐ、大和はエリの唇を塞いだ。
触れ合うキスから、相手の奥まで弄るキスまで、何度も何度も口付けを交わした。
エリの中は、少しだけチョコレートの味がした。もしかすると、仕事をしながらまた摘んでいたのかもしれない。好きな相手とのキスに溺れながら、大和は頭の片隅で考えた。