第2章 二夜目.ファンには夢を、君には愛を
そのちょうど、一ヶ月後。つまりはホワイトデーに、二人は再び顔を合わせる。
『待ってましたよ』
「なんだ、読まれてたか。実は、今日はお願いがあって出向いたわけでして」
『ふふ。抜かりはありません』
「いや、ホワイトデーの品をせびりに来たわけじゃないからな?」
『え?そうなんですか?でもまぁそう言わず、せっかく用意したので貰ってくれません?』
「そりゃ勿論。わざわざ用意してもらっちゃってほんと悪、って、なにそれデカ!!」
エリが屈んで長机の下から取り出したのは、シンプルな包装紙に包まれた大きな箱。しかも、とんでもなく重量がありそうだ。どうやら、段ボール箱の中に重たい何かが詰まっているらしい。
「愛が詰まってるにしてもデカ過ぎるって。気になるから開けていい?てか、駄目って言われてもこれは開けるわ。中身が気になり過ぎる」
エリが頷くのと同時、大和は包装紙を留めてあるセロテープを剥がす。すると中から見えてきたのは、見慣れたアレだった。
「…エリ、さん?これって」
『え?知りません?ビールです』
「それは見りゃ分かるけど!」
『なんだ。いつも発泡酒ばかり飲んでて、ビール見たことないのかと思った』
「失礼なこと言ってる自覚はありますかー?」
度肝を抜かれた大和だったが、エリがふふっと目を細めるのを見ていたら、もう何でも抜いてくれという気持ちになった。
「でもさ、なんでビール?」
『男の人って、甘い物食べられない人が少ないないかなって。あと、貴方が何となく酒飲み顔だったので。好きかなと思いました』
「失礼なこと言ってる自覚はやっぱりないな?」
憎まれ口の大和だったが、心の中は真逆で、うきうきと弾んでいた。やはり自分達は、相性が良いに違いないと確信したから。