第1章 一夜目.5時限目の空
きっと、彼女の言葉は一織を傷付けたろう。だが、結果としてこれで良かったかもしれない。エリはふっと、瞳を伏せた。
「普通のデートが難しいなら、私にしか出来ない特別なデートをプランニングします。アイドルが彼氏で良かったと、あなたに思ってもらえるように」
『え?』
「互いが忙しく会える時間が少ない分、会える際には至高の時を約束しましょう。夢を叶えるため努力を重ねるあなたに、私と過ごす時間がご褒美だと思ってもらえるように」
エリは、伏せた瞳を上げ一織を見つめる。さも当たり前のように淡々と説き伏せてくる彼を、驚きの表情で見つめた。
『何、言って…』
「分かりませんか、鈍い人ですね。全身全霊の力を持ってして、あなたを口説いているのですが」
『そうじゃなくて!だって、そんなの…無理だよ』
「無理ではありません。可能ですよ。私なら。
ひとつ、お伺いします。私がファンの方から、名前以外でどのように呼ばれているかご存知ですか?IDOLiSH7の和泉一織を推しているあなたなら、当然分かるでしょう?」
『え、っと…。パーフェクト、高校生?』
「正解です。その呼び名に恥じぬよう努力します。あなたに、完璧な恋人だと思ってもらえるように」
『…ふ、ふふ。普通、自分で自分のこと、完璧って言うかな。ふふ』
エリが我慢出来ずに息を吐き出すと、一織は少しだけ頬を赤くして半分開けた目を彼女に向けた。そして、むぅと閉ざしていた口を開く。