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十六夜の月【アイナナ短編集】

第6章 六夜目.その御伽噺の続きを私達はまだ知らない




—9小節目—
語られぬ物語の続き


「だいたいエリはワタシと話す際しばらくの間、敬語を使い続けました。リクにもそのような他人行儀な話し方を?と質問するワタシにアナタは首を振ったのです!OH…思い出しただけで、嫉妬の炎でこの身が燃え尽きてしまいそうになります」


ナギは、二人になると甘えたさんだった。


『ごめんね?』


エリは言ってから小首を傾げて、ナギに向かって両腕を広げた。彼はいつだってどんなときだって、彼女がこうすると必ず笑顔になってくれるのだ。


「ワタシは…永遠に、エリには敵わないのでしょうね」


そう言いつつも、ナギは嬉しそうにエリを抱き竦めた。じわりと優しく伝わってくる体温に身を委ね、エリもまた幸せを噛みしめる。
彼の指が、上から下へと何度も何度も髪を滑る。うっとりと自分で顎を上げれば、ナギの綺麗な顔はもう目の前で…。


「エリ、愛しています。ずっと昔から。もちろん今も、心から深く、誰よりも」


最上級の愛の言葉は囁かれるのに、エリが最も欲しいものが与えられることは今日もなかった。

最初は、大切にされているのだろうと思っていた。しかし、違和感が積もる理由は他にもある。


『ねぇ、ナギ。やっぱり、私聞きたいな…』

「いくらでも。今やワタシが愛を語るのは、エリにだけですから」

『それは嬉しいけど、そうじゃなくて。私が聞かせて欲しいのは…。ほら、ノースメイアの御伽噺』

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