第6章 六夜目.その御伽噺の続きを私達はまだ知らない
たい焼きとほうじ茶を美味しくいただいた後も、四人のまったりタイムは続いていた。カップに口を付けた後に、その箇所を指で拭うエリを見て、大和はしみじみ言う。
「はぁ…やっぱ女の子が一人いるだけで華やぐねぇ。いつもはむさ苦しい寮が、まるで違って見えるわ」
「人の彼女でもいいのかよ。まぁ気持ちはめっっちゃ分かるけど」
言いながらエリに視線を向ける二人を見て、ナギは唇を尖らせる。そして大和に右手、三月に左手を、上向きに差し出した。
「ん?なんだナギ、この手は」
「たい焼きなら、もうお前さんは自分の分食い終わったでしょ」
「返してください」
「返せって…ほうじ茶をか?俺もミツも、もう飲んじゃったよ」
「NO!アナタ達は、エリの吐いた息を吸いました!それを全て返してください今すぐに!」
妬きもち焼きってレベルじゃねぇ!二人はそう言って、その無理難題を前に爆笑した。
とそこへ、新たな帰宅者が一名現れる。
『あっ、陸!』
「エリだ!」
二人はいつものように、会うなり両手の平をぴたりと合わせる。
『良かった、会えたらいいなって思ってたんだ。これ借りてた本、直接返せたらいいなって思ってて』
「もう全部読んだの?すごい!ねぇ、どれが一番面白かった?」
『うーん。全部良かったけど、一番好みだったのは——』
会うなり親密な雰囲気を醸し出す二人を、三人は横目で見やった。そして大和が、ここぞとばかりにナギをせっつく。
「えーと…ナギさん?アレは、いいわけ?」
「……ふっ。リクは、ワタシほどでないですがエリとの付き合いが長いです。いわばエリにとっても大切な存在。ワタシほどではないですが。ですので、広く寛大な心で許しましょう」
「おぉ!やるじゃんナギ!なんか二回くらい本心が出ちまってたけど」
「ワタシは余裕のあるジェントル。だだし今夜は、一人枕を濡らすこととなるでしょう」
「「とんだジェントルだなあ」」