第6章 六夜目.その御伽噺の続きを私達はまだ知らない
エリを振った後、晴れて恋人関係に収まったというわけだ。自分と別れた直後に他の女と付き合った元彼氏も、全てを知った上で自分をゲームに誘った後輩も、全てが憎らしい。
もう、IPEXはやめるべきだろう。二人との接点など、会社だけで十分だ。
『……』
(ぐじぐじと、いつまでも引き摺りたくな)
パァァン!!と、高威力なライフルの発砲音が辺りを劈(つんざ)いた。
エリが惚けている間に、ハンサムが攻撃をしかけたのだ。彼の一撃は、元恋人の頭を見事に貫いていた。華麗なるヘッドショットを受け、情けなく四肢をだらけさせて倒れ込む男。それを目の当たりにした時、エリは胸のつっかえが一気に消えるのを感じた。
[ どうしましたか?こんな雑魚に構っている時間、我々にはありません!さぁ、前に進みましょう ]
ハンサムからのチャットを読むなり、エリはスコープを覗き引き金をひく。その銃弾は後輩の胸を貫き、彼女のアバターはあっさりと消滅した。
[ Fantastic!Nice Shot!]
ありがとう。そう打ち込んだ。しかし、エリは指の動きを止める。そしてエンターキーの代わりに押したのは、ボイチャ開始のボタンである。
『あ…、えと、その…。ありがとう』
たかがゲーム。されど、ゲームだ。
エリはこの日、ハンサムに救われた。