第6章 六夜目.その御伽噺の続きを私達はまだ知らない
—5小節目—
Let's Play Game
ゲームは、二対二のサバイバル形式だ。今回エリは、ハンサムとチームを組んで優勝を目指す。
『……』
(この人、めちゃくちゃ上手いな)
エリもそれなりの時間をこのゲームに費やしてきた。しかし、プレイ数十分で分かる。ハンサムは、彼女の幾段も上にいる。
地上へ降り立った三十チームは、着々とその数を減らしていった。残すは二チームのみとなり、全く危なげなく彼女とハンサムのチームも勝ち残っている。
最も敵を掃討した者に与えられる、キルリーダーという称号。ハンサムはその名誉を当然のように獲得している。
『……』
(キルリーダーの腕前が凄過ぎて、ビューがとんでもないことになってる)
彼の手でゲームを強制終了させられたプレイヤー達が、次のゲームに行かずハンサムのプレイ画面を見学している。なんとも勉強熱心なことだ。
こんなことは、彼にとっては日常茶飯事なのかもしれない。数多の見学者も意に介さず、華麗なプレイは変わらない。
滑らかな動作に見惚れていたのは、エリも同じ。しかしそんな彼女に喝を入れるように、ラストターゲットの影が忍び寄る。
エリの頭を掠めた銃弾。間一髪避けた弾のその軌道を読み、ハンサムが的確に相手の位置を素早く割り出す。その反撃は、誰がどう見ても決着の一手であった。しかし。
『!?』
ハンサムの放った銃弾は、不自然な軌道を描く。ありえないことに、ぐにゃりと曲がって敵を避けたのだ。
エリ、ハンサム、見学者、全てが同時に悟る。
『……っ』
(チーターだ…!)
ビューの数がぐんと減る。それは見学者達が、勝負は決したと判断した証拠だ。
そう。まともにプレイしたところで、チーターには何者も敵わない。それがIPEXの常識だから。
エリもまた、自分達の敗北を確信した。チート(ズル)をしてまでゲームに勝ちたいと思う人間の心理が理解出来ないと、溜息を吐く。
そんな冷えた空気の中、ハンサムだけはまだ心の炎を絶やしてはいなかった。
【卑劣な無法者め。必ずこの手で制裁を加えてやる】
『!!』
久しぶりに耳にしたノースメイア語は、かなり過激なものだった。