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十六夜の月【アイナナ短編集】

第6章 六夜目.その御伽噺の続きを私達はまだ知らない




なんとか聞き取れた、かつての自分も使用していた言語。まるで脳内に花火が打ち上がったみたいに、いくつものシーンがフラッシュバックする。
教会の高い天井、千切れた絵本、月明かりに光るステンドグラス、天使のような少年の笑顔。


“ Are you OK? ”


チャット欄の文字を見て我に返る。
いくらノースメイア語を耳にしたからといって、何故ここまでの衝撃を受けたのだろうか。自分でも驚いたが、もう落ち着いた。エリは慣れた手つきでメッセージを返信する。

さて。諦めの悪いチームメイトの為に何が出来るだろうかと、彼女は考える。
実はチーターは、単独であることが多い。チートを使う卑怯者と組みたがる人間はそう多くないから。今回の相手も例に漏れず、一人でのプレイのようだ。
となれば、数の優位は彼女達にある。ハンサムと上手く連携が取れるかどうかが勝負の鍵になるだろう。


『……』
(不思議だな。どうして初めて組む人なのに、こんなに信頼出来るんだろう。チーター相手なのに、今はもう負ける気がしない)


エリは遮蔽物から飛び出した。当然のように、彼女には銃弾の雨が降り注ぐ。しかしそのほとんどをエリは躱す。


『……』
(うん、案の定の残念エイム)


本当に上手い人間は、チートになど頼らない。エリの予想通り、相手の腕前はお粗末だった。しかしながら、こちらの攻撃も全く当たらない。さきほどのハンサムの攻撃同様、弾が敵を避けてしまうのだ。
他力本願なのは重々承知だが、ここからはハンサムの策に期待などしてみる。

ハンサムは、エリが囮となっている間に敵の裏側を取っていた。建物に立て籠もるチーターに、背後から忍び寄る。確かにハンサムの存在にチーターはまだ気付いていない。しかし、奇襲を仕掛けたところで攻撃が当たらないのだからダメージは入らないだろう。

そろそろエリの持ち弾が尽きる。その刹那、ハンサムは懐からは武器を取り出した。取り出したのは、銃ではない。グレネードだった。


『!!』
(なるほど!範囲武器なら!)

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