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十六夜の月【アイナナ短編集】

第6章 六夜目.その御伽噺の続きを私達はまだ知らない




—2小節目—
旧友との語らい


エリが待ち合わせ場所の喫茶店に入るなり、快活ながら澄んだ声が店内に響く。


「エリ!」

『陸!』


彼女は小走りで、自分の名を呼んだ人物の元へ向かう。そして、席から立ち上がった青年と両手の平を合わせた。

相変わらず、蕾が一気に芽吹いたみたいに眩しい顔で笑う。そんな彼とは、もう十年来の付き合いになる。陸がアイドルとして多忙になる以前よりも会う頻度は減りこそしたが、二人の休みさえ合えば、時折こうして時間を共有した。


「で、ナギが酷いんだよ。オレが敵に弾を当てられるようになるのは、四年後だって言ったんだ!」

『四年後?ふふ、流石に大袈裟』


そうは言うエリだったが、陸ならばそれくらいの時間を要する可能性もなきにしもあらずか。なんて思ってしまった。


「でも、この話には続きがあってさ。その後、少しだけナギにIPEXをやらせてもらったんだ」

『へぇ!どうだった?陸に失礼を言ったナギさんの鼻、明かすことは出来たのかな』

「実際にプレイするオレを見て…
訂正しまーす。さきほどは四年と予想しましたが、六年に上方修正でーす!
って、言われちゃった」

『うん?それはもはや下方修正なのでは?』


不服そうに唇を尖らせる陸。まぁまぁとなだめながらも、友人が自分と遊ぶ為に行なっていた密かなる画策に、胸を熱くするエリであった。

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