第4章 四夜目.恋のかけら
—20小節目—
変わらぬ愛を
「へへ、最高の誕生日だ」
彼は、隣で生まれたままの姿でいるエリをぎゅっと抱き締める。エリもまた、環の少し高い体温を感じながら幸せを噛みしめた。
『なんだか満足してくれてるけど、私まだプレゼントあげてないからね。タマちゃんは何が欲しい?なんでも用意するから言ってみて?』
「ふふん。実は、もう決めてんだよな」
『…もしかして』
「王様プリンを、100個!」
その予想通りかつ可愛らしい要望に、エリの頬は自ずと緩む。
『ふふ、うん。勿論いいよ。タマちゃんらしいリクエス』
「を、毎年1個ずつ。俺の誕生日に、ちょうだい」
エリは、はっとした。環が本当に望んだものは、プリンではなく “約束”
そして、環の儚げな笑顔を見てさらに気付いたことがある。
今どれだけ想い合っていようとも、時間が経てば二人はどうなるか分からない。心を許した大切な人が、ある日突然目の前から消えてしまうかも。そんな恐怖に最も怯えているのは、自分ではなく環の方なのだと。
「……やっぱ、ダメ?」
永遠に変わることのない愛。だなんて、それがどれほど夢物語であるかをエリは知っているつもりだ。しかし、環となら…環とだからこそ、そんな夢物語も現実に出来るのだとエリは本気で思った。
『駄目なんかじゃないよ。私4月1日だけは、どこにいて誰といて何をしてても、絶対にタマちゃんに会いに来る』
「えりりん…」
『あと百年生きれる自信はないけど、私が生きてる限りそうする。約束だよ』
「うん、ありがとう。めっちゃくちゃ嬉しい…。ずっと、ずっとこれから先も、ずーーっと、大好き」
言いたかった言葉なのに先を越されてしまい悔しくなったエリは、代わりに環を強く強く抱き締めた。