第4章 四夜目.恋のかけら
—20小節目—
SECRET NIGHT
「あんま…その、やり方とか分かんねえから、間違ってたら言って」
環の不安を取り除くように、エリは自分の緊張を隠して微笑んだ。
顔の横に突かれた両腕がゆっくりと曲げられて、彼の端正な顔が近付く。やがて、唇が合わさった。環の唇は、思っていたよりも柔らかい。
二人の初めてのキスは、微かに甘い洋菓子の味がした。
どうして触れ合うだけの口付けで、ここまで胸が高鳴るのだろう。エリは分かりきってることを、熱くなり始めた頭で考える。
「ん……っ、ちゅ」
『っ、は…』
触れ合うだけの口付けから、次第に大人のそれに変化していく。懸命に唇を吸う環が愛おしくて、エリは舌先で彼の唇に触れる。
驚かせてしまったのか、環が瞳を開ける気配がした。しかしそれは一瞬で、すぐに歯列を割って彼の舌が入ってくる。
二人の舌がゆっくりと絡まり、唾液が混じり合っていく。それをこくりと飲み下せば、まるで緩い劇薬のようにエリの脳を痺れさせた。
「触っても、いい?」
『もちろん…でも、その前に照明を少し落として欲しい、かな』
環は素直に頷くと、部屋の明かりを小さな橙に変えた。小走りでベットへ戻った環は、またすぐにエリの上に陣取る。
唇が合わさると同時に、環の手が腰の辺りに触れる。舐めるように括れを撫でる手付きに、エリは小さく身を震わせた。
これで合ってる?と、一挙手一投足ごとにエリの反応を窺う環。
『ん……、タマちゃんの好きにしてくれたらいいからね』