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十六夜の月【アイナナ短編集】

第4章 四夜目.恋のかけら




「あんたはどう思ってんのか知んねえけど、俺だって男だかんな」


エリは数回大きく瞬きをしてから、目を細めて馬乗りになった環に腕を回した。


『うん。ちゃんと知ってる。お付き合いする前から、ずっと知ってるよ』


環は、複雑そうな表情でエリの髪に頬をすり寄せる。


「ほんとに?えりりんは、どうせ俺のことガキ扱いしてると思ってた」

『そんなことない。タマちゃんこそ、私とこういうことしたかったんだね。知らなかった』

「したいに決まってるじゃん!ちゃんとエロい目で見てるし!」

『ちゃんと…』


苦笑するエリに、環はこれまで溜め込んでいた気持ちを吐露する。


「我慢してた…。無理やりして、嫌われたらイヤだし」


頬を薄い赤で染めて視線を横に投げた環に、エリはまた “可愛い” なんて言葉を言いかけたけれど我慢した。


「でも今日は、我慢しないでいいって言われたから」

『え?誰に?』

「ナギっち」


エリは、こめかみに指をあてる。まさか、自分だけでなく環にまで助言していたのか。
しかしながら、心のどこかではナギに感謝している自分もいる。現在進行形で、まんまと彼の術中にいるのだとしてもだ。


『いいんだよ。我慢なんてしなくて。タマちゃんになら何されたって嫌じゃない。まして嫌いになんて、絶対にならないから』

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