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十六夜の月【アイナナ短編集】

第4章 四夜目.恋のかけら




『学校が終わると共に校門を飛び出しました。しかし帰宅の道中、謎の覆面達に車で誘拐されてしまいます』

「は!?」

『四葉さんは頼みました。喉が渇いて死にそうなので、飲み物を下さいと。しかし覆面達がそんな要求を飲んでくれるわけがありません』

「覆面マジ許さねえ!」

『長い移動を経て、ようやく車から降ろされます。しかし驚いたことに、そこはなんと砂漠のど真ん中でした』

「いやありえなくない?」

『放置されてしまったので、あてもなく砂漠を彷徨います。強い日差しが身体中の水分を奪い、数時間後ついに倒れてしまいました。四葉さんの最期の言葉は “水…” でしたとさ』

「とさ、じゃねえよ!俺死んでんじゃん!てか、なんだよその話。んなこと現実に起こるわけねえだろ」


エリは、ゆるゆると深刻そうに首を振る。


『それが、もう起きてるんですよ。今の話は、四葉さんのお肌の話ですから。今お話したくらい、あなたのお肌は過酷な環境に置かれているのと同じなんです。水分が欲しくて水分が欲しくて、倒れてしまう寸前って感じ!』

「お、俺のお肌、かわいそう…!」

『でしょう?お水を飲ませてあげられるのは、四葉さんだけですよ』

「分かった。化粧水と、乳液、ちゃんとやんよ」


隣で全てを聞いていた壮五とスタッフは、その微笑ましいやり取りに笑みを零していた。
エリは、化粧水を染み込ませたコットンを両手の指先に置き、それを環の頬に優しく押し当てる。


『ふふ、よろしくお願いしますね』

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