第4章 四夜目.恋のかけら
ごめんなあ。と、二人に向かって謝罪をする三月。その隣にいた陸は、エリと環の顔を交互に見ながら訊きにくそうに言う。
「それで、えっと…話し合い?は、どうなったのか訊いても大丈夫…なのかな」
「リク、そのクエスチョンは酷というものです。アナタも感じるでしょう?二人を包むこのアンハッピーな空気感を。察するに、どうやらタマキはフラれ」
「フラれてねえーー!!」
環が言葉を被せると、ナギは切なそうに小さく肩をすくめた。
壮五が、エリの表情を窺うように視線をやる。彼にそんな気はまるでなかったが、エリはまるで責められているような心地に陥った。
『そんな顔をされても…。私、自分のどこを好きになってくれたのかさえ答えられないような人と、お付き合いは出来ませんよ』
びくっと肩を跳ねさせる環に、六人は驚きの表情を向ける。
「そういや、タマから聞いたことなかったな。エリチャンのどこを好きになったのか」
「ワタシはタマキに質問したことがありますよ。しかし、それはシークレットだと言っていましたね」
大和とナギが告げた後、改めて全員の視線が環に集中する。
「う……。だ、だってさ…んなの、恥ずかしいじゃん!」
『ふぅん。恥ずかしいんだ。へぇ…』
エリの冷たい視線を浴びた後、環は意を決したように背筋をシャキッと伸ばした。
「あぁもう分かったって!言う!言うから!んな顔すんのやめてくれ…っ」
『べつに無理しなくてもいいけど』
「いくらでも無理するっての!!ここで話さなきゃ、一生後悔するってことぐらいは俺でも分かんよ!」
男らしい環を前に、エリは密かにきゅんとする。
「おぉ!ついにオレらも聞けんのかあ」
「えへへ、オレも実はずっと気になってたんだ」
「あんたらは全員退場に決まってんだろ!廊下に立ってんのも禁止だかんな!」
落胆の色を隠せないメンバー達は、仕方なくすごすごリビングや自室に消えていく。無人になった廊下を確認した後、環はエリだけを再び部屋に戻し扉を閉めた。