第4章 四夜目.恋のかけら
「さっきっからえりりんが気にしてることって、そんな大事なこと?」
『大事、だよ』
「でも、もっと大事なこと、えりりんはまだ言ってない」
降り注ぐ、穢れのない真っ直ぐな環の視線。そんな瞳を見ていると、間違っているのは自分の方だと思わされる。
「えりりんの気持ちは?あんた、まだ自分の気持ちのこと一言も何も言ってない」
『……』
「俺のこと、好きじゃ…ない?」
『う、ん』
「……全然?」
『……ん』
「やべぇ。なんか、吐きそう」
強いショックを受ける環に思わず、ごめん!と謝ってしまいそうになる。しかし、ぐっとそれを飲み込んだ。
「じゃあ、嫌い?」
『ねぇ、これまだ続けるの?』
「俺のこと、嫌いか答えて」
エリの胸は、ナイフで抉られたように痛んだ。それでもなんとか、声を絞り出す。
『…嫌い、だよ。ずっとずっと、迷惑だった。もう、私のことなんて好きでいるの…やめてよ。環くん』
「……なん、で」
耳を塞いでしまいたかった。彼を傷付ける自分なんて、殺してしまいたくなる。そもそも、ここまでして彼を突き放す必要があるのかすら分からなくなってきた。
正解は、どこにある。
「えりりんはなんで、そんな嘘吐くの?」
『嘘じゃな』
「んな辛そうな顔して言われても、何も信じらんねえから。なんでフる側のあんたが、そんな痛そうな顔してんだよ」
顔をしかめたと思ったら、環はエリの体を抱きすくめた。