第4章 四夜目.恋のかけら
—4小節目—
引き金
この日、環と壮五はTRIGGERの楽屋を訪れていた。
「今日の歌番組生放送、僕たちMEZZO"も御一緒させてもらいます。どうぞ、よろしくお願いいたします」
「お願いしまーす」
「共演出来るって聞いて、楽しみにしてたんだ!こちらこそよろしくね」
龍之介はどんなときでもにこにこと笑って朗らかで、いつも環を安心させた。それは、今日も例外ではない。
すると突如、視界の外から誰かが肩をがっと組んできた。
「おい四葉!聞いたぜ?お前いま、惚れた女を落とす為に頑張ってるんだってな」
「うん」
隠す気などさらさらない為、楽の質問にただ頷いた。隣に立つ壮五が困り笑いを浮かべているのは、気のせいではないだろう。
「お前が好きな奴、見てみたいな。今度紹介しろよ」
「やだ。えりりん見たら、がっくんもぜってー好きになるから」
「へぇ、そんなにイイ女なのか」
環と楽の話をそばで聞いていた壮五だったが、我慢出来なくなり隣の龍之介に問い掛ける。
「あの、差し支えなければ教えていただきたいのですが…。環くんが誰かを好きだという噂が、そんなに広く出回っているんでしょうか?」
「うーん。まぁ、確かにそんな話も聞いたかも。でも俺達はその噂を耳にするよりも早く気付いてたよ。環くん、歌い方が変わったよね!特に、恋の歌を歌うときはピカイチっていうか」
「なるほど…。だから、TRIGGERさんは環くんが恋していると思われたんですね」