第4章 四夜目.恋のかけら
—3小節目—
恋のかけら
壮五は口角を上げながらも、複雑そうな表情をその顔に浮かべていた。
「環くんは、本当に彼女が好きだよね」
「うん」
「なんというか、愛情表現がストレートなのは君の良いところだと思う。思うんだけど…。もう少しだけ、周りに配慮してもらえないかな」
「…配慮って?」
メッセージを送信し終えたのだろう。環はスマートフォンを机に置き、壮五の方を見る。環は、怒ったわけではない。怒っているわけではないが、片眉が僅かに上がっていた。壮五は、慎重に言葉を選ぶ必要があるだろう。
「えっと、ほら…!あまり熱烈過ぎると、中崎さんも周りの人も気を遣ってしまうかもしれないし」
「は?そーちゃんは、俺が皆んなに迷惑かけてるって言いてえのかよ」
「そ、そうじゃなくて!」
「…んな顔しなくても、怒ってないから」
「うん…。上手く説明出来なくてごめんね」
今やIDOLiSH7も売れっ子アイドルと呼ぶに十分で、MEZZO"の活動も順調だ。この二人の関係も、以前より随分深まったといえる。だからこそ壮五は、最近は特に環のことを気に掛けていた。大切なパートナーに寄り添いたいと本気で思っているから。
お世辞にも環は、周りを見渡せる広い視野を持っているとはいえない。良くも悪くも素直な彼は、目的に向けて一直線だ。
環に追われるエリが、周りからどういう目を向けられるのか。それから、アイドルである環にとって良くない噂が立つであろうこと。そしてなにより、エリ本人の気持ち。
そういうことを慮るのが苦手な環に代われるのは、自分であると壮五は常々考えている。