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十六夜の月【アイナナ短編集】

第3章 三夜目.トライアングラー




三人は、三月が店内へ消えてからしばらくして中を覗いた。

夕方を越え、繁忙のピークを終えたのだろう。店の中に、三月以外の客は居なかった。

一織は三月と親しげに話す女性店員をじっと観察し、ほっと胸を撫で下ろす。


「あんなゲテモノをこの世に産み出すのは、一体どのような生物なのかと思っていましたが…良かった。人間で」

「いおりん、何気に一番えぐいこと言うのな」


ナギもまた、カウンターの中に立つ女性を見つめていた。


「ミツキの女性を見る目は確かなようですね。なんと、眩しくキュートな笑顔でしょう。叶うなら、ワタシも彼女のあの柔らかそうな手で、ハートを優しく握ってもらいたい…」

「おにぎりだけに、ですか?全く上手く言えてませんよ」

「てか、やめといた方がいいって。中に変な具入れられるかも」


三月は、寮とも仕事場とも違う表情で談笑していた。一体中で、どのような会話が繰り広げられているのだろう。店内に入ろうにも、他に客がいないのでは流石に尾行がばれてしまう。


「もう帰ろ」


最初に言ったのは環だったが、一織とナギも実は同じ考えであった。


「YES. あの二人にとっての幸せな時間が、少しでも長く続けばいいですね」

「いきますよ。私達は早く帰って、せいぜいお腹を空かせておくとしましょう」

「あーー…今日もまた、あのおにぎりかぁ…」


三月と女性の幸せそうな顔を見ているだけで、三人は胸がいっぱいになるのだった。

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