第3章 三夜目.トライアングラー
三人は、三月が店内へ消えてからしばらくして中を覗いた。
夕方を越え、繁忙のピークを終えたのだろう。店の中に、三月以外の客は居なかった。
一織は三月と親しげに話す女性店員をじっと観察し、ほっと胸を撫で下ろす。
「あんなゲテモノをこの世に産み出すのは、一体どのような生物なのかと思っていましたが…良かった。人間で」
「いおりん、何気に一番えぐいこと言うのな」
ナギもまた、カウンターの中に立つ女性を見つめていた。
「ミツキの女性を見る目は確かなようですね。なんと、眩しくキュートな笑顔でしょう。叶うなら、ワタシも彼女のあの柔らかそうな手で、ハートを優しく握ってもらいたい…」
「おにぎりだけに、ですか?全く上手く言えてませんよ」
「てか、やめといた方がいいって。中に変な具入れられるかも」
三月は、寮とも仕事場とも違う表情で談笑していた。一体中で、どのような会話が繰り広げられているのだろう。店内に入ろうにも、他に客がいないのでは流石に尾行がばれてしまう。
「もう帰ろ」
最初に言ったのは環だったが、一織とナギも実は同じ考えであった。
「YES. あの二人にとっての幸せな時間が、少しでも長く続けばいいですね」
「いきますよ。私達は早く帰って、せいぜいお腹を空かせておくとしましょう」
「あーー…今日もまた、あのおにぎりかぁ…」
三月と女性の幸せそうな顔を見ているだけで、三人は胸がいっぱいになるのだった。