第3章 三夜目.トライアングラー
—3小節目—
見守り隊の発起
三月は居なくなったものの、三人の話の種は相変わらず “不味いおにぎり” であった。
「みっきー、料理嫌いになったんかな…。それか、味覚バグったとか」
「えっ、だとしたら大変だ!原因は何だろう…」
「はは。いやー多分どっちも違うんでない?」
「はぁ…。嘆かわしい。非常に嘆かわしいです!」
大袈裟な溜め息を吐き、姿を現したのはナギである。意味有りげな彼の言葉に、環と陸は驚きつつも続きを待った。大和だけは、ナギがこれから言わんことを理解しているようである。
「大の男が三人も揃って、何故ミツキの想いを理解してあげられないのでしょう。答えなど、ひとつしかありはしないと言うのに。ズバリ、それは…」
「ズバリ…!」
「それは!?」
「ラブ。ですよ」
ラブ??と、環と陸は同じ方向に首を傾けた。ナギは水中で生き生きと泳ぎ回る魚の様に、悠々と話し続ける。
「イエス!ゲキマズおにぎりを毎日のように山ほど買い込むなど、愛のなせる技以外の何物でもありません。つまり、ミツキはそのおにぎりショップの看板娘に、恋をしているのです」
「おぉ…!さっすがナギっち」
「説得力あるー!」
ナギを前にして、二人は両手をぱちぱちと打ち鳴らした。
「こういうのは、外野が動いてもろくなことになんねぇぞ。出来るだけ、そっとしといてやんなさいよー」
大和の忠告虚しく、三人は何やら意気揚々と作戦などを企て始めていた。