第3章 三夜目.トライアングラー
まぁまぁ。と穏やかな声で仲裁に入ったのは、ほろ酔い気分のリーダーである。彼は頬を薄い赤で染め、テーブルに置かれた袋の中をちろりと覗きながら言う。
「まぁ二人とも落ち着きなさいって。ほらタマも、希望捨てるのはまだ早いっしょ。三角形のおにぎりあったら、お前さんが食って良…
ありゃ。見事に俵型ばっかだわ」
「ほらみろ!希望なんかねーじゃん!!」
絶望感に襲われる環から、三月はすっと視線を逸らす。そんな様子を見ていた陸は、苦笑いを浮かべている。そして中から握り飯をひとつ取り出し、それをしげしげと見つめながら首をかしげた。
「三角形のおにぎりは、どれを食べてもとっても美味しいのに。なんで、俵型の奴は………独特なんだろう?」
「りっくん。はっきし不味いって言ってもいいんだかんな」
環が再びそのワードを口にした途端に、三月の顔に冷ややかな笑みが張り付いた。
「んな顔したってしゃーないだろ!これの具が、いっつも変過ぎんの。ほら、前の “納豆とピーナッツ” とか最悪だったし!豆と豆が、口の中でぐっちょんぐっちょんに喧嘩してた!」
「いやいや、お兄さんは “大福” の方に一票。米の中に大福入れてみようって思考がもう異次元でしょ」
「あ!それならアレは!? “小豆の醬油煮” !アレもかなり衝撃的な味だった!」
環は胸を張り、ドヤ!と三月の方に向き直る。俵おにぎりを良く思っていないのは、自分だけではないのだぞと言いたいのだろう。
三月は何かを言いたそうな、説明をすべきかどうか悩んだ様子を見せた。しかし結局は、何も言葉を発さず風呂場へと逃げた。