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【呪術廻戦】致死量の呪縛

第4章 水魚之交


そんな規則正しい生活を送っているせいか、美代の体調に変化はなく、寧ろ良好だった。

「……私は、いつあの部屋から出れますか?」

「んー、それは、君の心次第だね」

例の美代を攫った怪しげな男______五条悟は、時々、気紛れで顔を見せにやって来る。そして、気分が乗れば好きな場所に連れて行ってくれる。しかし、それも当然監視付きである為、やはり美代に自由はなかった。その度に、私は、自分は、自分が、何のために今生きて、何をしているのかも分からなくなってしまう。それほどまでの虚無感を感じるのは、きっと、理解者がいないからだ。ずっと自分の傍に居てくれた唯一の理解者が、導いてくれる光が______神が。

美代はその日、許しを得て五条と共に故郷に訪れていた。そういえば両親はどうなったのだろうと少しだけ脳裏に彼らの姿が浮かんだ。地元の人に話を聞いて知ったが、美代が失踪して数日後にどうやら両親は亡くなってしまったらしい。不思議と何も感じなかった。自分自身が酷く人間らしい感情を抱けないことを五条に話すと、彼は初めて困ったように笑った。そして、美代の頭に優しく触れるといつもの笑みに戻って______

「大丈夫、君は元に戻れるよ」

「本当……?」

「僕を信じてくれたら絶対に助けてあげるよ。その代わり、一つだけ約束ね」

「何ですか?」と首を傾げた美代と距離を詰めると五条は小さく呟いた。それは、二人だけにしか聞こえないほどの小さな声であるのにやけに大きく響いて、美代の鼓膜を震わせた。

「______もし夢を見たら、絶対にその夢を夢だと思うこと。絶対にそれを現実にはしないこと」

いいね?と、普段より低い声で脅される様に付け加えられて、美代は促されるまま小さく頷いた。

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