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【呪術廻戦】致死量の呪縛

第4章 水魚之交


錆びた鉄の香りがした。
なんて嫌な匂いなんだろう、と美代は思う。湿り気のある水の香りと混じり合っては、全身に取り巻き、肌の奥まで浸透していくのを感じる。腰まで伸びた黒髪が重たく肩に伸し掛かり、体も心も深い深い水の底へと沈み込んでいく。______そこで、ふと、目が覚めた。

「やあ、おはよう」

薄暗い闇の中、最初に視界に映り込んできたのは目元を黒布で覆った上背がある男だった。
見目からして怪しい人物であるのは明確なのだが、男は美代が訝しげに見つめると何が面白いのかゆるりと口角を上げる。やはり、普通の人では無いようだ。

「あの、ここは……?」

辺りを見回してみるも、美代には見覚えが無い部屋だった。余計なものが一切置かれてない簡素な部屋の中心にある椅子に座らせられていて、両手足を拘束されていた。ギョッとして思わず目を疑う。そして、困ったように目の前の男を見上げた。

「ここ?呪術高専だよ」

「……じゅじゅつこうせん?」

「東京都立呪術高等専門学校……って言っても分かるはずないよねえ」

______東京都?なぜ、そんな所に。そもそも、何故拘束されているのだろうか。そして、目の前の男は誰なのだろうか。
次から次へと湧き出る疑問に首を傾げていると、男は「簡単に話すよ」とヘラヘラ笑った。

「まず、君、死刑ね」

「______は?」

簡単に話すとは確かに言っていたが、あまりに簡潔過ぎやしないだろうか。まだ、誘拐したと言われた方が余程現実味がある。死刑だなんて、何故?そもそも、何があったのか美代ははっきりと覚えていなかった。

「あ……!!宿儺、宿儺は?!」

そんな曖昧な記憶の中で美代が咄嗟に思い出したのが、彼の存在だった。拘束され、薄い布のような服を一枚着せられているだけだったので、自身の手元に無いのは確かなのだが、どこかで宿儺の気配を感じていた。

「やっぱり、君が宿儺を持ってたんだね」

「……だったら、なんですか」

「あれ、隠さないんだ?」

「どうせ、知ってるんですよね」

美代が鋭い目つきで睨みつけても、男はあっけらかんと笑うだけだった。
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