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【呪術廻戦】致死量の呪縛

第3章 飛んで火に入る夏の虫


______どうして、伸ばしているんだっけ。またしてもそんな疑問が生まれた。誰かにそうする様に命令された気がする。幼い頃に、本当にずっと前に。しかし、美代にはそうする様に促した人物を思い出すことは出来なかった。

「おーい、どうした?」

自身の世界に入り込み固まっていた美代を、虎杖が心配そうに眺めていた。突然声をかけられ、あっ、と美代の口から漏れた声に、彼は不思議そうに首を傾げた。

「ごめん、何でもないよ!」

彼に、話すことは何一つ無いはずなのに。今口から漏れそうになった悩みを飲み込んで美代はヘラっと笑って見せた。この感覚は何なのだろうか。気を抜けば簡単に彼に何もかも話してしまいそうな程、陶然とするような、麻痺してしまうような。______考えたとて何一つ答えは浮かばなかったが、虎杖には初めて会った様な気がしなかった。人懐っこい、その笑みのせいだろうか。


美代は彼の後を追う様にして、再び歩き出す。
何も変わらない平凡な日々。高校生になっても、きっと何も変わらない毎日。その筈だったのに。


新たな出会いは、美代の平凡な日々の終わりを意味していた。

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