Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第50章 トカゲ
しばらくの間その状態のまま、時が止まっていたようになっていた。
ルーナの心音が落ち着いたように感じて、フロックがゆっくりと体を離す。
互いにいつもの表情に戻っていた。
「ありがとうフロック。」
「こちらこそです」
そうしてまた歩みを進めていく。
メリッサ、カイル、サラの墓に近づくにつれ、そこに誰かが立っているのが見える。
帽子を深く被っていて、見たことのない佇まいだ。
背丈からして男性のよう。
すると、その男はこちらに気づいたようで顔を向けてきた。
しかし帽子のせいでそれは見えない。
「不審すぎます。気をつけてルーナさん」
「わかってる」
こそこそと耳打ちしながら徐々に距離が縮まっていく。
すると、突然男がつかつかとこちらに歩を進めてきた。
もう正面に迫るというところで、瞬時にフロックがルーナの前へ出た。
ルーナを庇うように立ちはだかり、男を睨む。
「お前はどこのどいつだ。ここは調査兵団の墓地だぞ。」
すると男はゆっくりと帽子をとって顔を上げた。
ルーナは息を飲む。
ヒュッという冷たい空気を一気に吸ってしまい咳き込みそうになる。
「クラム…!」
あの頃の長い髪はバッサリ切られていて短髪になっているが、整った顔つきは相変わらずで、紛れもなくそこにいるのはクラムだった。
子供らしさはもうなく、とても大人っぽくなっている。
まさか、数年ぶりに、もう一度会うとは思わなかった。
「お久しぶりです、ルーナさん」
フロックは険しい顔をして2人を交互に見ている。
「誰なんですか、ルーナさん…」
「あ、そっか、知らないよね。フロックが入団する前にいた私の部下だよ」
フロックは、失礼な態度を取ってしまったと思ったのか気まずそうな顔をして頭を下げた。
「メリッサとカイルとサラの墓参りに、ようやく来れました。」
クラムは眉を下げながら静かにそう言った。
冷たい風が3人を揺らし、なんとも複雑な空気が流れる。
「助けられなくてごめんなさい…」
「ルーナさんが謝るのはおかしいですよ」
今ここでクラムに、なにもできなかった自分を酷く罵られる方が楽だと思ってしまった。