Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第8章 帰還■
「私はそういう人を何人も見てきた。誰かに心無いことを言われて傷付き心を閉ざしてしまった人や、大切な人が巨人に食われてトラウマになり戦えなくなってしまった兵士、壁外に行く度に人が死ぬのを見続けて廃人状態になってしまった人たち、自殺をしてしまった人たちだって何人もいる...」
ルーナは悔しそうに遠くの空を見た。
月明かりで照らされたその姿は、顔に影を作り、淫妖でもあり神々しくもある雰囲気を醸し出している。
「だから私は身体の傷は怖くはないし死ぬのも怖くない。1番怖いのは心が傷つくことだよ。心が傷ついて何の薬も効かずに苦しんで死んでいく...それだけは...怖いなって思ってる」
「本当に薬はねぇのか?」
「...え?」
リヴァイはルーナに向き直って真剣な顔で口を開いた。
ルーナはこの時初めて、リヴァイの顔がなぜだか女性のように美しいと思ってしまった。
今までに見た事のないほど切なく悲しげな表情だからだろうか?
いや、悔しさ、憤り、怒りの表情だからか?
それとも…月明かりのせいだからか?
「俺は今日、今までにねぇくらい心底傷ついたが、お前のおかげで少しはその傷が癒えたぞ」
「えぇ?どうして?私があなたを傷付けたのに」
「俺もお前を傷つけたからお互い様だと言ったのに、お前まだそんなこと言ってんのか」
「だって…私は…」
救えなかった。誰も。
あなたの大切な人も。
リヴァイはルーナの手を引いて自分の腕の中に彼女の身体を包んだ。
「...これで分かるだろ」
「リヴァ...わか...んないよ...て...いうか...苦しいっ...て...」
ギュッと強く抱きしめられたリヴァイの腕の中で彼の胸を叩く。
分からないって思いたい。
お願いだからこんな私に優しくしないで…
甘やかさないで…
罪を赦さないで…
パッとリヴァイはルーナを解放したかと思えば、ルーナの手を引き、
「ならわからせてやるから来い」
そう不機嫌そうに言ったかと思えばそのままづかづかとルーナを連れて歩き始めた。
「まっ、て…」
「お前自身を解放しろ」
毎日毎日、そんな泣きそうな顔しやがって…
なぜ泣かねぇんだよ…
お前の中の感情はどうなっちまってるんだ?