Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第46章 烟月
「リヴァイ兵長、あなたがよろしければ、私はもちろんなんでも聞きますし、助けになれることがあればなんでもします。」
真剣なバリスの力強い言葉を聞きながら、リヴァイは切なげに目を逸らした。
「…お前には…いつも救われてばかりだな」
「なにを仰いますか。私の方が兵長に散々救われてきた身です。どれも一瞬たりとも忘れたことはありませんよ。」
バリスは昔のある日のことを思い出していた。
それは先輩の熟練兵士を看取った時のこと…
その兵士は上半身を巨人に齧られた状態で帰還した。
誰がどう見ても助からないことは一目瞭然で、医者はせめて最期にできることは痛みを少しでも和らげるためにモルヒネを打つことくらいだと言った。
しかしそれを打ったら本当にもう最期だ。
バリスも尊敬しているその兵士はリヴァイが信頼している部下の1人だった。
半分開いている目は虚ろで、半分開いている口からは蚊の鳴くような呻き声を発している。
その様子は誰もが直視できるようなものではなかった。
しかし、リヴァイだけは至って冷静な表情で隣の椅子に腰かけ落ち着き払っていた。
ジッとその兵士を見つめたまま動かない。
「へい…ちょう……」
バリスはそのとき信じられない光景を目にした。
まさかこんな状態で喋れるはずがない…
しかし兵士は最期の力を振り絞ってリヴァイ兵長を呼んだ。
「俺はここにいるぞ」
リヴァイはその兵士の手を握った。
もうすでに目は見えていないことをわかっているのだ。
「すみ…ませ…役立たず…で…」
「お前はじゅうぶんによくやった。そしてこれからも、存分に俺の力になっていく。」
虚ろな兵士の目から涙が零れ落ちた。
誰もが目を背けたが、バリスだけはその2人から目が離せなかった。