Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第46章 烟月
「兵長っ…どちらへ行かれていたのですか?」
兵舎へ着くやいなや、焦ったような表情でバリスが声をかけてきた。
ふと時計を見ると、もう午前10時を回っている。
ひとまずバリスを部屋へ招き入れ、立体機動を外し、兵服を脱いだ。
バリスがいてもお構い無しにシャツのボタンを外し、緩く着崩した状態になってからリヴァイはようやくソファーに向かい合わせに座った。
「地下へ行っていた」
「っ!えぇっ…で、何か分かったのですか?…」
「あぁ。あいつがあそこで何をしていたのか分かった…」
冷静な口調で淡々と話すリヴァイを複雑な表情で見つめるバリス。
聞いていいものかどうか分からず口を噤む。
「…安心しろ。お前にはきちんと話す。だがその前に本人と2人で話がしたい」
バリスのその表情を見やりながらリヴァイは言った。
「あ、いえ、私のことはよいのです。お2人でしかできない内容の話はあると思いますし第三者の私に無理に共有していただかなくても」
「いや、お前には聞いてほしいんだ…」
遮って言われたその小さなつぶやきに、バリスは気が付いた。
リヴァイの下がった眉を見ながら思う。
きっと抱えきれないほどの感情を背負ってしまっているんだと。
誰かに共有することで、心の重荷を減らすことができる。
自分で良ければなんでも話してほしい…
それで少しでもリヴァイ兵長が軽くなってくれるなら…
悲しみや痛みが少しでも減るのなら…
本当は、普通の人間がするように弱音や愚痴を吐いてほしい。
しかしそれだけはこの人から一言たりとも聞けないのは分かっている。
だから…せめて少しでも…
嘘でも事実でも、とにかく何かを吐き出して欲しい。