Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第43章 神と善悪
「だって、なにかを叶えてくれる存在でもなければ、助けてくれる存在でもないでしょ。だったら神様って一体何なの…」
バリスは静かに応えた。
「そう思うのは、神=善だと考えているからではないでしょうか?」
その言葉にルーナはハッとした表情になるが、バリスはそのまま続けた。
「そう考えるから、どうして世の中には悲しいことが多いのだと思ってしまう。でも実際は、神は善でもあり悪でもある。愛でもあり無でもある。」
沈黙が流れる。
難しい話だと思い眉をひそめた。
「善も悪も神ってこと?」
「善も悪も神の一部ということです。どんな人も生まれた時から悪人ではなく環境などによってそうなってしまう。とすれば、人間の本質は善でも悪でもない。だから神によって善と悪に分かれたと考えるのではなく善も悪も神の一部なんだということです。」
バリスはそう言いながら、ルーナに水を飲ませた。
喉に落ちていくその冷たい感覚は、自分の体が生きようとしていることを実感させられる。
「…難しいね。正直よくわからないな」
ルーナはポツリと本音を言った。
しかしバリスは微笑んだまま続けた。
「そうですよね、でも…僕たちに愛があり、道徳的なことをしようとする意思があるのも、神がいるからですよ」
「じゃあバリスは神を信じているの?」
その言葉にバリスは一瞬考えてから言った。
「"善"という認識の神は信じていませんよ。でも"全"という神は信じています。…神とは、人の価値基準を超えた世界そのものなんですよ。」
神=善ではなく神=全であるということだろうか。
そう考えると、神をただ縋るだけの何かとして都合よく解釈している自分たちがとんでもなくエゴな生物なのだと思い知らされるような気がした。
ため息をひとつつく。
どうにもバリスと話していると、頭をフル回転させることになる。
しかしルーナにとってそれはなぜだか苦痛ではなかった。