Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第42章 深淵■
「君たちの言いたいことも分かるよ…」
生きやすい世の中が最も美しい。
だとすると、自分たちの過ごしてきた日々は全く持って逆ということになる。
それでも神や愛といった、美しいに例えられるものはある。
時にそれも煩わしさを感じさせるものであることも確かだが。
「けれど、生きているという実感を持てる、自分に価値があるのだと認められる、そういう場所でもある。」
子供たちとディーターの視線がルーナに集まる。
「・・・じゃあ地上には神様はいんのか?」
少年がポツリと言った。
「地上には壁を神だと讃え祀ってる集団もいるんだろ?その神ってのは本当にいるのか?」
ルーナは押し黙った。
難しい話だ。
正直、神という偶像的でどこか現実味のないその存在は、いるともいないとも言えない。
「神ってのがいたら、腹減ってたら飯食わせてくれたり、邪魔な奴らを殺してくれたり、死んだ奴を生き返らせてくれたり、…してくれんのか?」
"人間は神の失敗作に過ぎないのか、それとも神こそ人間の失敗作に過ぎないのか"
いつかバリスが言っていた言葉を思い出した。
「そういうことをしてくれるのが神様とは言わないかもしれない。」
ルーナはそう言うと、眉を顰めて俯いた。
今まで何度も祈ってきた。
神様なんて口に出したことは無いが、何に祈ってきたのかと言われればそれは神様に違いない。
自分たちより遥かに上の次元の、目に見えない崇高な存在。
人の力の及ばない大きな存在。
幾度となく、誰かの無事を祈ったり、成功を祈ったり、幸せを願ったりした。
生き返らせてくれと祈り、死なせないでくれと祈り…
けれどきちんと叶えてくれたことなどほとんどない。