Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第42章 深淵■
「オランピア…いや、クシェル…」
そう小さく呟いたかと思えば、目を見開いてまたルーナを見つめた。
「嬢ちゃん、あんたは…クシェルの娘か何かか?」
「…え?」
そこでルーナの思考が一気に動き出した。
名前は聞いていなかったけど、リヴァイの母親は娼館で働いていたと聞いていた。
そしてアッカーマンという姓はその頃からもうほとんど居なく、今ではリヴァイとミカサのみだ。
「あの娘は美人だったからよく覚えているんだよ。ガキ作って、そのあと病気もらっちまってうちに来なくなっちまったけど…」
そうだったんだ…
でも美人だったのは頷ける。
だってリヴァイはあんなに美しい整った顔をしているから…
ルーナは気がつくと表情を柔らかくしていた。
「それからケニーってのが来て、やたらオラ…クシェルのことを聞きたがってね。そんときはクシェルの苗字なんて知らんかったが。……で、とうに昔のことなのによく覚えてるってわけ。」
「そうなんですか。ケニーさんが…」
「あんたもケニーを知ってるのか」
「はい…彼は亡くなりました…」
「ほう…」
男は苦い顔をしたあとカウンターに置いたその薬を差し出してきた。
「これ、やるから。」
「えっ…」
ルーナはそれを受け取り、驚いた顔で男を見た。
「ケニーにも結構世話になったんだよ。うちのケツ持ちになってくれてさ。おかげでうちの店だけ揉め事が起きず消されもせず、未だにこうして残ってるってわけさ。」
男は笑いながらもどこか切なそうに瞳を揺らした。
「ありがとうございます…」
「その薬、クシェルは飲まなかったな…頑なに産むと言って聞かなかったんだよ」
その言葉に、ルーナは息が詰まる思いがした。
そのおかげで自分はリヴァイと出会うことができた。
きっとクシェルさんはとても強い人だった。
だからリヴァイもあんなに強い。
でも私は弱いから…これを…
「いやまさかこんな偶然があるとはなぁ…あんたはクシェルの娘、そうなんだろう?顔は似てねぇが…」
ルーナは一瞬言葉を詰まらせたが、ニッコリと微笑んで答えた。
「はい。でも息子もいますよ」
「えっ?!2人もガキ作ってたの?いつの間に…」
ルーナは驚いて額をかいている男に律儀に頭を下げてから店を出た。