Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第42章 深淵■
「いらっしゃいま…ん??」
初老の男がカウンターで訝しげにルーナを見やった。
つかつかと男の前まで歩みを進め、フードをとった。
途端に男の表情が不気味な微笑みに変わる。
舐め回すようにルーナを見てニヤリと開いた口からは、たった数本の歯しか見えない。
「君なら良い給料出せるよ。このまま今夜からうちでー」
「私ここに働きに来たのではないの。ちょっと相談があって。」
「…え?なんだそうなの、なに?」
ポカンとした表情のまま男がまた上から下までじろりとルーナを見た。
「ダミアンさんの薬屋で買った中絶薬を1つ譲ってくれないかしら?言い値で構わないから。」
なるべく丁寧な口調で落ち着いて言った。
しかし男はたちまち不機嫌な表情になる。
「ダメだよ。あれは滅多に手に入らなくて貴重なんだ。」
「そこをなんとかお願いします」
深く頭を下げるが、それでも男はいい顔はせずに腕を組み始める。
「…ていうか、なんで?自分に使うの?」
「…はい」
男はしばし沈黙したあと、小袋に入った錠剤を1つ取り出した。
「言い値でいいと言ったね?」
「はい。いくらでも構いません」
男はそれでも渋ったように唸り声を上げた。
そして再度ルーナの真剣な顔を、舐め回すように隅々まで凝視する。
「嬢ちゃん、名前は?」
「え…なぜですか?」
「君みたいな綺麗な子の名前をうちの子の源氏名に使いたいんだよ。よくそうやって美女の名前にあやかってんのさ。金と、そしてあんたの名前を貰う。」
ルーナは戸惑ったように眉間に皺を寄せながら呟くように言った。
「ルーナ…アッカーマン…」
すると男の顔がみるみる驚愕の表情になり、ルーナは何事かと顔を強ばらせる。
「な、なんですか…」
「…まさか…そんな…」
男は慌てたように分厚い冊子を奥から引っ張り出し、パラパラと捲り始めた。