Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第42章 深淵■
古びたその小さな建物は、明らかに普通の店ではない佇まいだ。
外にまで不気味な空気が漏れだしていて、一瞬怯む。
「中に入ったら、買わないと出してもらえないよ。いいの?」
男は仏頂面で低く言った。
しかしルーナは明るく返した。
「ありがとう。あなた良い人ね。お名前は?」
男は目を見開いたあと僅かに顔を赤らめて視線を逸らした。
「そんなこと言われたの生まれて初めてだな…良い人か…慣れねぇ響きだ。」
クスクスとルーナが笑うと男はまたルーナに視線だけ向けた。
「ディーターだ。あんたは?」
「…ルーナ」
そう言ってからいくらかの金を押し付けた。
ディーターはそれを受け取りながら、苦い顔をして言う。
「…あんた意外としっかりしてるな。地下は初めてだろうになぁ。
…ま、あんたが出てくるまでここで待っててやるよ」
「え?どうして?」
「そりゃ心配だからに決まってるだろう。あんたみてぇな女が1人、こんな夜中にこんなとこほっつき歩いて…いくらナイフ持ってたってな、役に立たねぇときもあるんだ。」
真剣な顔でそう言い放たれ、ルーナの顔つきも真剣になる。
ルーナは少し迷ったような素振りを見せたあと、確かに無事に地上へ戻れるか自信が無いと思い直し、承諾した。
地下街へ来たのは、リヴァイたちを捕らえに来た以来でたった2度目だ。
あの時はエルヴィンやミケがいたからどうにかなったが…
入り組んだ分かりづらい道のこともあるし、女1人で永遠うろうろする羽目になるのも危険すぎる。
中へ入ると、古びたカウンターがありそこら中にはいろんな薬や瓶が置いてある。
今まで嗅いだことのないような不思議な臭いがし、ルーナは顔を歪めた。
奥から現れた中年くらいの男は、入ってきた女の姿に一瞬驚いたように目を見開いたかと思えばニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「女1人でお買い物ならだいたい…これかこれかな?」
挨拶もなしにゴソゴソと奥から取り出したものをカウンターへ置いていく。