Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第42章 深淵■
「はぁ…くそ……で、あんたは何者だ?こんな夜中にこんな所へ何しに来た?」
男は首の傷を触ってから、血の着いた掌を見つめながら言った。
「薬屋さんを探してるのよ…」
「はぁ?」
「地下にならあるでしょう?地上であまり流通してない類のものとか…」
あぁ…と男は不敵な笑みを零した。
「なるほどね、あんたもヤク中か。そういえば前にもいたな。あんたくらいの背丈の奴で、よくここへ来ては妙薬をひたすら買い漁ってた女が…」
ニヤリと笑う男は不気味に舌なめずりをし、明らかに真っ当な人間ではないように思える。
背は190近くあり、痩せているがなんとも言えない独特の気迫がある30代後半くらいの男だ。
暗闇の中、金色の髪がやけに目立っている。
「私が求めているのは中絶薬なの。それもとても強力なやつ。」
男の笑みがピタリと止んだ。
代わりにかなり訝しげな顔で眉間に皺を寄せ始めた。
「…あんたまさか孕んでんの?…で、堕ろしたいと?」
ルーナは真顔のまま何も言わない。
「ここにそれだけ求めに一人で来たってことは、誰にも知られずに堕ろしたいわけだ。そうだろう?」
しばしの沈黙が流れたと思えば、ルーナは静かに口を開いた。
「…えぇそうね…私にはやらなきゃいけないことがまだまだあるから子供を産んでいる場合ではないの」
それを聞くと、男は随分と不機嫌そうな面持ちで唸った。
「姉ちゃんさ…あんた…そんな簡単に言うけど、分かってんのか?勝手に妊娠したかと思えばあんたの都合で勝手に腹ん中の子殺して…どんだけ鬼畜で野蛮な人間か…」
ルーナはフードを深く摘んで俯いた。
そんなこと分かってる…
それに私は…
「…人間じゃないから…」
「…は?なんだってぇ?」
「私は人間じゃないの。悪魔だから。」
男は目を見開いたままフードを見つめた。
「だから私には産む資格ないし、育てる資格もないの。というか…できない。どうしても無理なの。」
だから仕方ないの…
そう言うと、男は諦めたようにため息を吐いた。
「わーったよ。ついてきな…」