Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第42章 深淵■
「ね、リヴァイ…」
「なんだ。まだ起きてやがるのか」
リヴァイはルーナの髪を撫でながら、グッと深く引き寄せた。
「・・・あれを、打って」
「ダメだ」
そう言うと思っていたから即答をした。
もうこれ以上、睡眠のためだけに注射薬は使えない。
完全に依存してしまうだろう。
ルーナは小さくため息を吐くと、リヴァイの服をギュッと掴んだ。
そして拳でトントンと軽く胸を叩いてくる。
「ふ……」
リヴァイはつい笑ってしまった。
笑える状況ではないのになぜだか口角が上がり、ルーナを抱く腕をわざと緩めた。
それに呼応してルーナの叩いてくる拳にも力が入ってきたのがわかる。
ドン…ドン…ドン…ドン…ドン
「そうだ、そうやって…俺にだけぶつけてればいい…」
はっきり言って、ルーナにいくら殴られたところで、強靭な筋肉が張り巡らされているリヴァイの身体はビクともしないし何も感じない。
「……もっと強くやれよルーナ…」
呆れたように言ってやった。
そういえば…こいつは今日、涙を一滴も流してなかったな。
とすれば、そうとう溜まっているはずだ。
言葉では言い表せないほどの感情が、こいつの中で逃す術なく暴れ回り、きっとこのままだと正気を失ってしまうだろう。
できればまた泣き喚いてほしい。
それができないなら、
こうして…
「…どうした、もう終わりか?」
ルーナの拳が止まった。
疲れたのか、はぁはぁと息遣いが聞こえる。
少し休憩して落ち着いたのか、拳の往来はまた再開された。
ドン…ドン…ドン…
暗闇で、ルーナがどんな顔をしているのかはわからない。
けれどどんな思いでどのくらいの重みでそれをぶつけているのかはわかる。
エルヴィンを救えなかった。
リヴァイはその贖罪もかねて、ルーナに身を任せた。
俺を殺すくらいにかかってこいよ…
疲れきったのか、いつのまにかルーナは動きを止め、リヴァイの胸に拳を置いたまま寝息を立てていた。