Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第42章 深淵■
「その話はまた場を改めてからする予定だ。今はお前も休め」
リヴァイの落ち着いた声にフロックがため息を吐いた。
「…なぜそんなに呑気にしていられるんです?
あんなことをした敵を、俺は一生許さない…絶対に報復してやる…そのためにはエルヴィン団長の存在が必要不可欠だった。なのに…」
「過ぎたことをここで議論しても仕方がないだろう」
「違いますよ、そういうことが言いたいんじゃない…
俺はただ!エルヴィン団長に次ぐ新しい悪魔が必要だと言っているんです!」
リヴァイがくまの張り付いた目で、声を荒らげるフロックを見据える。
沈黙が流れ、リヴァイが口を開きかけた時だった。
「もう…わかったから…」
ルーナが先に声を出した。
掠れるような、蚊の鳴くような小さな声だ。
ルーナの顔は俯いていて表情がわからない。
「・・・」
「・・・」
2人は訝しげにルーナを見つめた。
「もう…わかったからさ…
そんなに何度も…あの人の名前を出さないで…」
「ではあなたが団長になって下さるということですね?」
「あ?なんだと…」
フロックの言葉にリヴァイが目を見開くと、ルーナはキッパリと言い放った。
「私は団長にはなれない。でも…悪魔になることはできる」
残念ながら私は団長にはなれない。
体のことも精神のこともあるし、あの人の後釜には到底なれっこない。
「…なにを言っている?ルーナ…」
リヴァイが顔を険しくしながらルーナの方へ歩みを進めようと1歩踏み出した。
「だから私がっ!…」
ピタリとリヴァイの足が止まる。
突然大きな声を出し俯いたままのルーナに目を見張る。
「私も…悪魔になるから!!だから!みんなも悪魔になればいい!この島の悪魔に!
そうでしょうフロック?あなたも悪魔になればいい。
だからもう…彼の話をしないでっ!」
薄暗い静かな部屋に響いたその叫びは、その後の沈黙を更に重苦しいものにした。
しかしフロックは口角を上げ、不気味な笑みを浮かべている。
「フロック、お前はもう戻れ。疲れてるだろ。」
初めに口を開いたのはリヴァイだった。
「そうですね。"彼" はかなり重たかったですから」
フロックは複雑そうな面持ちのリヴァイの横を何食わぬ顔で通り過ぎ部屋を出ていった。