Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第42章 深淵■
「エル……」
名前を声に出して言うことができず、代わりに冷たい空気を飲み込む。
震える手でその手紙を取ると、
そこのページに書かれている文字が姿を表した。
"怪物と闘うものは、その過程で自らも怪物にならぬよう心せよ
お前が深淵を覗く時、深淵もまたお前を覗いているのだ"
意味分からないよ。
今すぐここで教えて?
そう心の中で呟く。
カタタッ
後ろから物音がし、急いで本を机に戻し手紙を懐に入れた。
振り向くと、そこにいたのはリヴァイ
ではなかった。
「フロック…」
フロックは辛辣な表情を浮かべ、部屋の中へ入ってきた。
ぐるりと広いこの部屋に視線を走らせると、またルーナをまっすぐ見つめる。
「…最後まであの人に従ってくれて…ありがとう」
ルーナは感謝の気持ちを込めて労いの言葉をかけた。
その言葉に、フロックは顔色一つ変えないまま口を開く。
「巨人を滅ぼすことができるのは、悪魔だ。」
「…え?」
「そうは思いませんか?」
ルーナはゆっくりとフロックに向き直ると、眉をひそめて自嘲気味な表情を浮かべた。
「そうだね…悪魔…だね…」
「俺は最後まで団長に注射薬を打つことを譲らなかった。悪魔を蘇らせることが生き残った俺の使命だと思った…それなのに…リヴァイ兵長はアルミンに使ったんですよ。これは間違っていたと思いませんか?」
このことに関しては、なんとも言えない。
リヴァイとエルヴィンの間でなにかやり取りがあったのかもしれないし、リヴァイに何か思う節があったのかもしれない。
その場にいなかったどころか、命を懸けて闘いにすら挑んでいない自分は何も言う権利がない。
そう思ってルーナは口を噤んだ。