Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第42章 深淵■
ルーナは空っぽになった団長室へと足を運ぶ。
開けられたカーテン。そこからの日射しによって、小さな塵がキラキラと光り空気中を舞っているのがわかる。
それに包まれるように佇む椅子と机。
座る者のいなくなった椅子ほど悲しげなものはない。
"やぁ、ルーナ"
いつものあの朗らかな笑みで、まだそこに座っているような、そんな感覚がして全く実感が湧かない。
そうだ、実感が湧かないから、何も感じないんだ。
それは、何も受け入れられていないということ。
だってエルヴィン…
私たち、小さい頃からずっと一緒だったじゃない…
信じられるわけが無い。
まだそこにいるんでしょ?
ゆっくりと机に近づいていく。
後にここは片付けられ、整理整頓され、
彼がいた形跡は跡形もなく消し去られるだろう。
そしたら私はその事実を、否が応でも受け入れられるのだろうか。
そしたら涙は出るのだろうか。
机に重なっている本の上に、震える手を乗せる。
冷たい。
あなたは幼い頃からとても読書家だったね。
読んだ本の知識をよく私に言って聞かせてきたよね。
幼い頃は目を輝かせて…
大人になってからは…
それが全くなくなったし、私も聞かなかったけど…
あなたは一体何をいつも真剣に読んでいたの?
ルーナは1番上の本を手に取り、ゆっくりと広げた。
体から力が抜けているせいか、妙に重く感じる。
難しそうな文字が細かく羅列していて
相当気合いをいれないと読めなさそうだ。
ルーナは目を細めて本を閉じると、積み重なっていたもう1冊の本を手に取った。
またも、そんな具合の本で頭が痛くなりそうだ。
彼が何を読み何を考えていたのか、少しでも知りたいと思ったのだが、恐らくそれは、何年かかっても到底計り知れないだろう。
諦めたようにパラパラと捲っていくと、あるページで強制的に止まった。
その原因は手紙のようなものが挟まれているからだと分かる。
「っ……」
達筆な美しい字で自分の名前が書かれている。
それはまさしく自分宛だった。