Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第42章 深淵■
神は…
本当にいるのだろうか…
そう誰もが1度くらいは考えたことがあるだろう
エルヴィンが死んだ。
その事実を聞かされても、不思議と涙は出なかった。
それに至った過程を聞かされても、声すら発さず、ただ能面のような顔を貼り付けたまま。
まるで全ての感情が何かに吸い取られていったかのように、ただただリヴァイとハンジの話を聞いていた。
「エルヴィンを選ばなかったのはこの俺だ。
だが後悔はしねぇつもりだ…」
こくり。
ルーナは眉ひとつ動かさず汗ひとつかかずに僅かに頷いただけ。
作戦は成功したとはいえ、調査兵団はほぼ壊滅。
生きて戻ってきたのはたった9人。
エルヴィンの指示により無くなったものは大きいが、得られたものも大きかった。
リヴァイは2人きりになった部屋で、ルーナの隣に腰を下ろし片腕で肩を抱き寄せた。
「あいつは悪魔になるしかなかった。だがもう解放された…ゆっくり休ませてやりたい…」
リヴァイの胸に埋まっているルーナは微動だにしない。
その頭を見下ろしながら、リヴァイの顔が歪む。
「…すまねぇ」
「謝らないで…」
ようやく聞こえてきた声は掠れていてまるで吐息のように小さかった。
「リヴァイが無事に帰ってきてくれて…よかった…私との約束…守ってくれてありがとう…」
リヴァイはその言葉に奥歯を噛み締め、自分の中を蠢く複雑な感情を飲み込むようにきつくルーナを抱き締めた。
「ルーナ…」
奥から絞り出すような声でそう呼ぶ。
ずっとこうして名前を呼びたかった。
そしてこうして抱き締めたかった。強く…
返事をするようにルーナの手が背中に回ってきたが、力は全く入っていない。
バリスの報告によると、自分たちが空けていたここ2日間のルーナに異常は全くなかったらしい。
だが、エルヴィンが死んだこれから先は…
不意にとてつもない恐怖がリヴァイを襲ってきた。
抱き締める力が強まり、ルーナの息が僅かに詰まるのが聞こえた。
それでも、力の籠った腕と、後頭部を押し付ける手の力に抑制が効かない。
ルーナもただただ人形のようにじっとしている。