Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第40章 博打
「なんだ」
ルーナは視線をテーブルに落とすと、ゆっくりとカップを持ち上げ、紅茶を1口啜ってまたそれを置いた。
その様子をひとつも零さずに真剣に見つめるエルヴィン。
「まだ何も決まったわけじゃないんだけど…」
そこで一度呼吸を置くルーナを促すように、エルヴィンは前かがみになる。
「どうした」
その後のルーナの話に、エルヴィンはみるみる顔色が変わり、こぼれ落ちそうな程に青々としたその瞳を大きくした。
「なん…だと…」
リヴァイとクラム、どちらの子とも分からない子を妊娠しているかもしれない…
そしてそうだったとしたら、いずれにせよ産むつもりなのだと…
「まだひと月も経っていないから…もちろんわからないけど…でもね、何となくわかるの…ここに…いるんじゃないかなって…」
そう言ってルーナは自分のお腹に手を当てた。
その手の指に嵌められている指輪を見つめながら、エルヴィンは目を細めた。
「それでも私は奪還作戦には行こうと思ってたよ。でも…残れという命令を今あなたに下された。」
エルヴィンには今、複雑な感情が蠢いていた。
てっきりルーナは自分も行くと言って聞かないと思っていたのだが、残るように言い渡したエルヴィンに対して至って冷静だった。
そしてその理由はあまりにも予想外すぎる驚愕の内容…
しかしいずれにせよ、これでルーナをここに留めておくことができる。
「あぁ。君はやはりここで待機をしていてくれ。…そしてもしも本当に身ごもっていた場合の話だが、確かに産むか産まないかは君の自由だ。…しかしな…」
口篭るエルヴィンに、ルーナは静かに言った。
「分かるよ、言いたいことは。…でも…私には命を見殺しにすることはできないから…」
そうだろうな。
君なら間違いなくそう言うよな…
そしてその考えは何があっても曲げない。
君は昔からそういうやつだ。
エルヴィンはルーナのことを再確認するように頷いた。
「わかった。…それよりこのことは、本来こんなに暗い空気でする話ではない。もしも本当に、新しい命が君の中に宿っているならば、俺は心から祝福するよ」
エルヴィンの優しい笑みに、ルーナの表情が明るくなる。
幼い頃から何度も見てきたあの純粋無垢な笑顔だ。