Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第40章 博打
「ふふ…私たちよくこうして昔から、いろんなこと真剣に語り合ったり議論したりしてきたよね。」
その言葉に、紅茶から顔を上げたエルヴィンは懐かしそうに眉を下げた。
幼い頃、森で見つけた昆虫のことや草花のこと、鳥の巣を見つけては雛鳥が卵から還るまで毎日のように観察しては、あーでもないこーでもないと話し合っては、時に揉めたりもしていた。
そのどれもが今となっては遠い昔の記憶だ。
しかし2人とも全く忘れてはいなかった。あの無垢な日々を。
「あぁ、幼い頃から俺たちの興味の湧くものは同じだったからな…君のあまりの破天荒さにはいつも肝を冷やしてはいたが…」
ルーナはケラケラと笑いだし、そしてエルヴィンも笑った。
まるで幼い頃の2人に戻ったかのようにそれは無邪気で無垢な空気感だった。
「懐かしいな…あの頃は…俺たちは何も知らなかった」
「うん、何も知らないしなにも失ってないし何も持ってなかったね…」
あれからいつのまにか20年以上経ってしまった。
色々なことが沢山あったのは確かだが、なにもかもがあっという間すぎて、まるでタイムスリップしたかのように一瞬だったと2人は感じていた。
こうして想い出を語り合ったり、ましてや2人きりでゆっくりするなどという暇さえなかった毎日だった。
「なぁ、ルーナ…」
「…うん?」
エルヴィンは真面目な顔付きになった。
窓から照らされる光によって、エルヴィンの顔に影ができる。
太い眉と大きなブルーの瞳、高い鼻に整った唇。
そのどれもが彼の顔の彫りの深さを再確認させられる。
「ウォールマリア奪還作戦の日には、君はここに残ってくれ」
沈黙が流れた。
目の前にいるルーナをまっすぐ見据えながら、エルヴィンは僅かに目を見開く。
思っていた反応とあまりにも違っていたからだ。
ルーナは眉ひとつ動かさず、瞬き1つせずに、冷静かつどこか柔らかい表情でエルヴィンを見つめている。
しばらくしてからルーナが口を開いた。
「それが、私に話したかったこと?」
「あぁ」
「私も今日、あなたに話そうと思っていたことがある」
エルヴィンはゆっくりと息を吸って、そして吐いた。
こういう表情をする時のルーナはいつだって心の内に何かを秘めている時だ。